カタツムリには超危険なものも さわっちゃダメ!
沖縄でも雨が降った後に、巨大なカタツムリを見ることがあります。アフリカマイマイです。大雨の後は道路を歩いていたり、川の上流から流されてきたものが、マングローブにくっついていることもあります。しかしこのアフリカマイマイやリンゴスクミガイ(通称ジャンボタニシ)、ナメクジの仲間などには広東住血線虫が体内に存在している可能性があります。これらの生き物を経由して、広東住血線虫が人体に感染すると、生命にかかわるような危険性があります。実際に世界各地で死亡例もあります。日本も、そして沖縄も例外ではありません。国内初の死亡例は沖縄でした。たいへん衝撃的な出来事でした。近年で衝撃的なニュースとしては、オーストラリアで、ふざけてナメクジを食べた男性が、この病気にかかり、8年後の2018年に亡くなったことでした。ネットのニュースでも広く取り上げられていました。
アフリカマイマイ 動画
広東住血線虫とは
熱帯や亜熱帯の地域に生息しています。線虫と呼ばれる生物(成虫で2㎝くら)で、ネズミの肺動脈に寄生して卵を産み、これが幼虫になると糞や尿と一緒に排泄されます。これらを食べたりして、アフリカマイマイやナメクジなどの中間宿主の体内に入り、さらに人体に入り込むと、神経系や脳を侵され、好酸球性髄膜脳炎を発症し、重篤な症状が現れる場合があります。人間への感染と予防
アフリカマイマイやジャンボタニシ、ナメクジなどの中間宿主を触らない、生で食べないということが重要です。そして感染は経口(口からの侵入)と経皮(皮膚などからの侵入)が考えられるので、とにかく見つけても絶対にさわらないことです。触った手をなめたり、目をこすったりすると危険です。さらにさわった指先から直接、体内に侵入することもあります。これらが活動していたあたりの水や土壌から感染する場合もありますので、水たまりなどは不用意に触らないようにしましょう。移動した跡や採食した跡からも感染する可能性があるので、生野菜を食べるときにはよく洗うようにしましょう。最近ではハワイへの観光客で感染事例が増加しているそうです。サラダをたくさん食べたことからの感染が急増しているようです。とにかく知らないものは触らない、手を良く洗う、生野菜はよく洗う、そんな当たり前に思えるようなことが重要です。治療方法
残念ながら特効薬や特別な治療方法はないそうです。対症療法といって、身体に生じた症状に応じて、これにともなう痛みなどを軽減させるような対処となるようです。軽症の場合は、しばらくしてそのまま自然治癒する場合もあるそうです。アフリカマイマイ
スクミリンゴガイ(ジャンボタニシ)
沖縄県の注意喚起のチラシを掲載させていただきました。
これだけは知っておきたい
広東住血線虫 Q&A
広東住血線虫ってどんな寄生虫?
成虫は、大きさ20~34mmで、ドブネズミやクマネズミの肺動脈に寄生してそこから虫卵を産みます。孵化した幼虫(1期幼虫)は気管 食道 胃 腸 を経て糞といっしょに外へ出ます。ネズミの糞便中に出てきた幼虫はどうなるの?
そのままだと死んでしまいますが、ナメクジやマイマイと接触すると、1期幼虫は体内に侵入そ感染力を持つ3期幼虫にまで発育します。ネズミが、このマイマイやナメクジを食べると、3期幼虫はネズミの体内で成虫になり肺動脈に寄生します。成虫が寄生するネズミは終宿主、幼虫が成長・発育する軟体動物は中間宿主と呼んでいます。また、中間宿主を捕食するカエルや陸棲プラナリアを待機宿主といいます。
人へはどうやって感染するの?
人への感染はマイマイやナメクジを生で食べたりあるいは素手で触れたりして感染した例があります。最近はナメクジやマイマイによって汚染された生野菜を食べて感染した例も報告されています。人が感染したらどんな症状が出るの?
人の体内に侵入した場合、幼虫は脊髄や脳に移動します。そこでは白血球の一種である好酸球の著しい増加をともなう髄膜炎および脳炎を起こします。そのため激しい頭痛、発熱、顔面麻痺、四肢麻痺、昏睡などの髄膜脳炎症状が出現します。重症度は感染した幼虫の数に左右されます。潜伏期は1~2週間といわれています。どこに分布しているの?
広東住血線虫は、台湾、タイ、インドネシアあんどの東南アジアや太平洋諸島に分布しています。わが国では沖縄県に比較的多くみられますが、本土の港湾などのネズミからもこの寄生虫が検出されたことが報告されています。これまでどれくらいの感染例があるの?
わが国では、1970年に沖縄県ではじめて報告されて以来これまでに52症例が報告されていますが、そのうち35例(67%)は本県が感染地と推定されています。死亡例は?
2000年6月に沖縄で、7歳の女の子が死亡した例が1例あります。有効な治療薬は?
特効薬はまだありませんが、、対症療法により症状を緩和することは可能です。人は広東住血線虫の固有宿主ではないので、虫体は脳内で最終的には死滅します。マイマイやナメクジはどんなところにいるの?
主に畑周辺に放置されたビニールシートやダンボールの下などで多く観察されています。沖縄で広東住血線虫が検出されたマイマイやナメクジの種類は?
2001~2003年の調査で採取された軟体動物は、陸生貝類が6種(アフリカマイマイ、シュリマイマイ、オキナワウスカワマイマイ、バンダナマイマイ、オキナワヤマタニシ、ヒラコウラベッコウガイ)、淡水産貝類が1種(リンゴガイ)、ナメクジ類が4種(アシヒダナメクジ、チャコウラナメクジ、ナメクジ、ヤマナメクジ)、陸棲プラナリア2種(ワタリコウガイビル、ニューギニアヤリガタリクウズムシ)の合計14種でした。広東住血線虫が検出されたのはアクリカマイマイ、ヒラコウラベッコウガイ、アシヒダナメクジ、チャコウラナメクジ、ニューギニアヤリガタリクウズムシ)の5種でした。
野菜への付着が確認された1例
畑で収穫した直後のキャベツの葉を4~5枚むいたところニューギニアヤリガタリクウズムシが確認されました。マイマイやナメクジを捕食するこの軟体動物はキャベツに害を与えることはなく、ねぐらにしているようです。気がつかずにスライサーなどでスライスされることでキャベツが虫体に汚染される可能性も考えられます。
予防法のポイント
1.民間療法としてナメクジ等を食べないこと。2.誤って、マイマイを口に入れたり、触れた手をなめてしまった場合は、ただちに水で口を十分にすすぐこと。
3.マイマイやナメクジは素手で触らないこと。
4.直接手で触れたりした場合は、流水、石鹸でよく洗うこと。
5.野菜や果物を生で食べる場合は流水で十分に洗うこと。
沖縄県衛生環境研究所 微生物室
読みやすいように沖縄県の注意喚起のチラシから転載させていただきました。